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2007.10.05 (Fri)

S1 

§1

【More・・・】

『11月9日
彼と出会って、今日で丁度2ヶ月になる。この2ヶ月を振り返ってみて、私には急激な変化が訪れているというのを自覚した。
先ずは価値観が変わった、人を信じるなんて言語道断と考えていたが、信じる事も必要なのだと気づかされた。
それは私の生活の変化によるものだろう。
私は今、後輩君と同居…いや、彼のマンションに居候させてもらっている挙句、部屋をひとつ借りている…という表現が妥当だろう。
経緯については、私の恥ずかしい思い出プラス面倒なので割愛する。続きはウェブで…っと。
家族、という言葉に美しい感情を抱いてない私に、改めて正しい意味を教えてもらっているような…私の思い込みか?
つまりは、ぶっちゃければ、私は今、彼と生活を共にして至極幸せである…と。
何気ない日常に、並々ならぬ暖かさを感じている…と。』
ここまで書いて一人で赤面、何を日記に惚気た事を書いているんだろう私は。
誰かに…後輩君に見せるわけでもない日記、私しか見ない物だから別に何を書いても…って、違うなっ!大分違うな!色々と!
コンコンッ
『部長、入っていいか?』
「ふぉ!?お、おう」
急いで日記を閉じる。
ガチャッ、ドアを開けて入ってくる彼の手の上にはお盆、その上にコーヒーカップが乗せられていた。
「日記か?俺はどうもそういうのは性に合わなくてなぁ…ほいコーヒー、砂糖3個にミルク2個……で、いいんだよな?熱いから気をつけてくれ」
「う、うんっ、ありがとなっ!…ぁっ」
「ん?」
「い、いや大丈夫だ」
カップを受け取るときに、指と指が触れ合ってしまった…なんて、いくら私でも言えない。顔の温度が上昇する。しかし、彼は何事もなかったように敷き皿を机の上に置く。お盆を胸に抱えた姿がメイドさんに見えた。
「なんか、後輩君メイドさんみたいだな」
「他に何か御用はございますか?お嬢様」
「ははは、就職先にこまらなそうだな君は」
「そういう物好きはこちらから願い下げだけどな」
「そうか?私なら雇うぞ」
「そ、そうか…ありがとう」
…ん?後輩君が赤くなっているんだろう……
「日記なぁ……俺はぜんぜん続かねぇんだ、これが」
「私も、最近書き始めたばっかりだぞ」
…日記をつけ始めたのは丁度2ヶ月前の夜から。つまり…彼と出会った日から。
私には不安があった、今は幸せだけど、いつかこの日々も過ぎ去ってしまう…と。無論、そんな事は嫌だ。けれど、幸せこそ長続きしない物と、私の過去がそれを裏付けてくれている。だから、せめて…書き記して置きたかった。
『私と彼が居る日々』を…。
-神様の部活動 Feat COTS「季節外れの雪」-
………。
『綿奈ちゃんは何でもできちゃうのね!またテレビの人が来るわよ!』
『ははははぁっ!綿奈ちゃんのおかげで義父さんも鼻が高いよ!』
『綿奈ちゃんが大きくなったら、是非うちの子とお見合いを!』
『是非ともうちの学園に綿奈ちゃんを!』
そこに私は居なかった。
”天才少女”としての秋乃綿奈が居るだけで、私の意思も、私の個性もそこで生きる事は許されなかった。
何一つ不自由する事はなかった、空腹を耐えることも、傷の痛みを感じる事も、病に苦しむ事もなかった。
その分、友達を作ることも、怪我をすることも許されなかった。
設備は完璧な檻の中で、私はいつも空を見ていた。
私がどんなに寂しい日でも、空は晴れていて、鳥達は詩を口ずさみながら空を翔けていた。
私は幼いながらにも、自分の積み重ねてきた時間を恨んだ。自分の存在を恨んだ。
何故、私は天才なんかに生まれてしまったのだろう。何故、知りたくもない事を知らなければならないのだろう。
何故…父と母は死ななければならなかったのだろう。
…両親は、私を庇いこの世を去った。
『辛いだろうけど…生きて』
それが、母親の最後の言葉だった。
あの事故が無ければ、私は…普通の少女として幸せに生きていたのかもしれない。
…けれど、過去は取り返せない。それを私は知った。
そして私の心に、幸せは長続きしない という溝が深く掘られた。
けれど、私は死のうとは思わなかった、母親の言いつけを守るために…
いつか、私の”天才”と呼ばれる頭ですら理解しきれない事を見つけるために。
しかし、運命…いや、それを決めているであろう神は残酷だ。
両親を失った事故で、私は背中に消えない傷を負った。あたかもそれは翼を失った天使のような…。
…翼が欲しい、孤児となった私を引き取った伯父夫婦の屋敷で私がただひとつだけ、密かに願っていた事だ。
しかし、神はいつまでたっても私に翼なんかくれなかった。くれるのは、天才少女の称号と、有名人という肩書き…そして孤独。
…そんな日々の中で私は育っていった。
私は、天使なんかじゃない……。
「お嬢様?」
「わひゃぁっ!?…す、すまない、ど、どうした?」
「コーヒーのお代わりはいかがですか?」
…けど、今の生活は違う。
ちゃんと…
「いや、要らない…要らないけど」
「けど?」
ちゃんと…私が居るから…、独りじゃないから…。
「もう少し、この部屋に居てくれないか?」
「お、おう」

SideChange...

最近、日に日に部長が可愛くなってきている気がする。
出会った当初は表情の変化が乏しく、顔から考えている事が読みきれないでいたが、今はちゃんと、笑ったり…笑った…あれ、泣いてる所や怒ってる所見たことないぞ?
ま、まぁとりあえず、表情から感情を読み取れるようになってきた。
それは、一緒に住んでて、顔を見る時間が極端に長くなったから…からかもしれない。
それにしても、何故俺は部長と一緒に住んで居るのだろう。…特に理由が必要なわけではないが、なんとなく知りたかった。経緯とかそういうのじゃなくて、俺が、どう思っているか…。
多分、答えは出ている。けれど、それを自分自身が認めないのか隠しているのか…。
部長と一緒に住んでいて、不愉快に思ったことが一度も無いというのも不思議な点である。生活習慣が似ているから…というのもあるかもしれない(歯ブラシは流水で洗う とか トイレは座ってする とか)…勢いあまって、部長が入っている風呂場のドアを開けてしまった事があったが(良い身体してたな…部長)
って!部長が目の前に居るのに何を考えているんだ俺は!
…それにしても、今日の部長は様子がおかしい。
深い瞳の光が薄暗くなり、奥は覗かせんとばかりに複雑な色をしている。そして、軽く憂いを帯びているかのようにも見えた。
「………。」
「……。」
部屋の中を、沈黙が流れている。…なんとかしなきゃ…か?
「部長、日記は毎日書いているのか?」
「…んっ?あ、あぁ…日記…か」
まずった、今話しかけちゃいけない空気だったくさい。空気の読めない男の称号は要らない。
「考え事の邪魔しちまったな…すまん」
「い、いやっ!大丈夫だぞっ!そ、そのっき、気にしないでくれ!」
「すまん」
「……。」
…こういう時は………悔しいが、あいつを頼るか…。
「ちょっと、電話してくる」
「えっ…?後輩…君」
俺は、携帯を片手に部屋を出た。
…。
ピッポッパッポッ…っと。
不本意だが、こういう場合はかなり頼りになる人間に通じる番号にダイヤル。
RRガチャッ
…ワンコ殺(コール音一回で取る)とは…。
『あん?アポも無しに携帯に電話しくさりやがるのは何処のドラ息子かい?』
「あんたの家のドラ息子だよお袋さん。まぁ、突然の電話はすま……って、何故母親に電話するのにアポが要るんだよ」
『お前が親の反対を押し切って、マンションで独り暮らしなんか始めるからだな。そもそもまだいっちょまえな年齢にもなってないくせに女飼いはじめやがって…ほんとにアタシの子かねお前』
「さぁな、自分でも怪しいぐらいだ」
『へっ、ま、アタシが腹痛めた事実があんだから、悔しいけどアタシの子だよ。あやつが変なおたまじゃくしを中出ししてくれたおかげでね』
「で、だ」
『飼ってる女の事だろう?男ってのは、女の事になるとやたらと答えを急ぐからねぇ…ほんと、お前も父親似だね』
「そうかもな、恐ろしく不運なところとかそっくりだぜ。」
『女に恵まれてるってあたりもそっくりだね』
「寝言は死んでからたっぷり言え」
『へん、死なれちゃこまるくせに強がってんじゃねぇっての、ジャリガキが』
「…で、気分転換としたら何が良い?」
『適当にホテル連れ込んでしっぽりイっちまえばそれでいい』
「その前座として」
『旅行でも連れてってやりな、お前の親父はそうしたよ』
「…旅行か…。」
『指定の口座に振り込んで置いてやるよ、ただし2年後には嫁を連れて家に「母さん、俺結婚します」って挨拶しに来い。出来ないなら振り込まないね』
「ありがとう、母さん」
『へっ、じゃ、がんばれよホーケイ坊主』
ガチャッ

SideChange...

…出ていってしまった。
ドアの向こうにはすぐ彼が居るというのに、何故こんなにも寂しいのだろう。…何故こんなに不安になるのだろう。
電話が終われば彼は戻って来てくれる……わかっている…わかっているのに…辛い。
ネガティブなビジョンが、頭の中を駆け巡る。電話が終わったら、彼が私の目の前から居なくなってしまう…。私は…また独りになってしまう。そんなのは…そんなのは…嫌だ!!
けれど、彼の電話を邪魔する権利が私にどこにある。…それどころか
電話の相手が誰かを聞く権利すら、私には無い。
私は、後輩君の……後輩君の……恋人じゃ…ないから。

ガチャッ

「ふう、あのアマ…年甲斐も女っぷりのひとかけらもねぇな…ほんと」
アマ…つまり、女性の代名詞 その言葉が深く私の心を突き刺す。
同時に、その言葉を言った後輩君自身への憎悪が込み上げる。
(嫌だ…!私はこんな感情抱きたくない!)
身体は心の言う事を聞かず、胸は締め付けられる。
「ん?あぁ、俺のお袋な。相手は」
「そ、そうだったのか…!…なんだ…よかった…。」
「でさ、部長…言いにくいんだけどさ…なんっつーか…」
安心は束の間しか貰えなかった、普通のことなのに、そうだ…彼が突然居なくなることだって、ありえない話でもなんでもないんだ。
そんな事に不安を覚えるほど…私は……私はっ!
「私は…覚悟…出来てる…ぞ」
「いや、覚悟されても困るんだけど…さ、なんっつーか…その、あれだ。
最近、っつーか今日、なんか部長疲れてるっていうか…機嫌悪い…っていうのかな?まぁ…そんなかんだでさ…えっと…」
「私、機嫌悪いって思われてたのか…。」
「…で、部長…俺と一緒に…さ、旅行、いかねぇか?」
「…へっ?」
数秒間ほど、何も考えられなくなった。本当に、人の心はわからない。…いや、後輩君の事がわからないのか。けれど、そのわからなさが…とても楽しい。
「や…嫌ならいいんだけど、今週末3連休じゃん?で、気晴らしに旅行でもいかねぇかなーって、場所も決まってないんだけどさ…金は出すよ」
「い、い、いっ…い…」
「あー、やっぱ、部長…嫌か?」
「嫌なわけあるかあああああああああああっ!!いくぞ!後輩君!旅行だ!
海だ!山だ!スク水だ!そして裸エプロン…。後輩君の裸エプロンはぁはぁ…!海…!海ーっ!!温泉ー!ふおおおお!!」
なんか、吹っ切れた。
「どあああああ!!夜だから大声出すなって!部長!11月に海は無理だ!」
「寒・中・水・泳だああああああああっ!!」
「イヤアアアアアアア!!」
…翌日、管理人さんに怒られた。ごめんよ、後輩君。

…。





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